日本、アメリカ、中国、イギリス…世界各国が全員イケメンキャラに姿を変えて、それぞれのお国柄を発揮しつつ「オフィス地球」で働く模様を描いたコメディー漫画。先月、1巻が発売されたばかりです。

 物語 ぼくは日本(ヒノモト)。オフィス地球で、アメリックことアメリカ、中国たちと一緒に働く真面目なサラリーマン。押しの強いアメリカの子分的な立ち位置になってしまっているけれど、自分なりの能力や持ち味も十分発揮している。

 アメリカが私物をどんどんデスクの周りに置くのは困るけど、おかげで他の社員に手出しはされない。悩みの種は、デスクの近い双子社員の大韓民国・北朝鮮の一人、北朝鮮が紙飛行機に凝っていて、やたらぼくのデスクの近くへ飛ばしてくること…。

 まず、絵がキレイで大変見やすく、キャラの顔が全員イケメン。かといってみんな同じように見えるかというとそんなことはなく、国柄を反映させた個性はしっかり表現されています。中国については「いつか会社全体を自分の色に染めたいという野望を持っており、業績は社内2位だけどいまいちリスペクトされていない」。日本と国交はないけど民間の交流が盛んな台湾については、「仕事上のつきあいはないけど話しやすい存在」として描いているのも説得力があります。「オフィスあるある」になぞらえて国際情勢が的確に、しかも極めて分かりやすく描かれているあたり、ぜひ高校生ぐらいの若い人達に目を通していただき、現在の社会情勢を形成する「地政学」を頭と感覚にたたき込んでいただきたいと思えます。世界地理の授業の前に一読してもいいかも。

 ビジュアル面から対象に迫る勉強は非常に有効です。

 ただ、しっくり来なかったのはウクライナの描き方(メガネでそばかすの気弱な人物というキャラクターにも違和感が…)。発生から半年経とうとする現在もなお深刻な状況が続くロシアによるウクライナ侵攻に関しては、本書での地政学的な説明だけでは事の本質をつかみ切れないと感じました。

 これは私が幼少時に、誇り高きザパロージエのコサック達の戦いを描いた物語、パルナス坊やのモデルであるかわいいネズナイカ少年の物語(どちらもウクライナ人作家の作品です)を読んでいたこともあって、心情として絶対的な強さをもってウクライナ側に立っているためかもしれませんが、地球的な視野に立って公平な視点でみても、ロシアの所業は地政学的な説明だけでは収まり切れないように思います。利益と打算「だけ」でも意外と人は動かないもので、何らかの心情的動機がすべての行動の裏にはあります。国もまたしかり。為政者も人間である以上、打算よりもその行動や判断を裏で動かす何らかの因子があるのでは。

 地政学による地図に、文化の地図、宗教の地図といろんな世界観を重ねていくことが求められます。(里)