
なぜ人を好きになるのだろう、なぜ陰口におびえるのだろう…。忙しい日々の中で、ふっとそんなことを思うことはありませんか。この本は、さまざまな疑問に向き合う子どもたちの「なぜ」を考える「こども哲学」シリーズ日本語版(朝日出版社、全7巻)に収録されている物語を集約し、新たに東日本大震災をテーマにした物語を加えた短編集です。それぞれの物語の主人公である小学生に湧き起こる心情の「なぜ」を的確にとらえています。
こども哲学はもともとフランスで刊行された本で、現地では幼稚園生が愛とは、生きるとは何かについて自由に意見を言い合っているそうです。哲学といえば堅苦しいと感じがちですが、子どもの純粋な問いから出発しているのだと思うと哲学も親しみやすくなるのではないでしょうか。
東日本大震災をテーマにした物語は、周りに家族や友人を失った人が当たり前のようにいる中「なぜ自分たちが悲しい思いをしないといけないのだろう」という心情が何ともリアルに描かれていきます。それでもどうにも抗えない。悲しさを乗り越え、生きていく意味をそれぞれに見いだそうとするのです。
著者も若い頃、親友を亡くしてしまうのですが、その時の心情について「人間って不自由だよなあ」と綴っています。人前で泣くのは恥ずかしいと分かっているのにどうしようもなく涙が流れる。自由に生きられるはずなのに、コントロールができなくなる。でもその不自由さは気持ちいいものでもあるとも著者は肯定しようとし、前を向こうとするのです。
自分は幸せだ、と思う指標は人それぞれですが、どうしても他と比べてしまうもの。なぜという小さな疑問は、比較から生まれてくるのかもしれません。自由なはずなのに、人と比べては不自由さを感じる。まさに著者の言う通りなのだと自分なりに解釈しました。(鞘)


