議員の前でカナダ移民と観光について話す河上准教授

 美浜町議会の議員研修会が22日開かれ、カナダ移民研究をはじめ三尾の魅力や活性化に取り組んでいる京都外国語大学グローバル観光学科の河上幸子准教授が「地域資源としてのカナダ移民」をテーマに講演。三尾にルーツのあるカナダ人訪問者向けの移民データベースや検索システム「デジタル・アーカイブ」の構築に取り組んでいることを話し、ルーツ・ツーリズムによる観光推進の可能性を示した。

 遺伝子検査サービスや自分の家族に関する資料を検索できるインターネットサービスの普及で、ルーツを探す旅行形態「ルーツ・ツーリズム」が欧米で急成長中。河上准教授によると、カナダへの移民者が多い三尾にも、ルーツを探しに来る日系カナダ人が増えているという。

 河上准教授は、三尾のカナダ移民史をルーツ・ツーリズムに活用できるように資源化することが必要と主張。昨年から5カ年事業として、文科省の補助金を受けて他の大学の有名な研究者と共同で、三尾移民データベースとデジタル・アーカイブの構築に取り組んでいることを説明した。

 移民データベースは、三尾のカナダ・ミュージアム館内閲覧資料として、ルーツ探しに来るカナダ人訪問者や移民研究者ら向けに、三尾から出移民した世帯の個別情報を日英両語で検索できるようにする。デジタル・アーカイブは、インターネット公開型で、ルーツ探しに来る外国人が検索できるようにするほか、国内では他に取り組んでいる地域がほとんどなく、先進地として国内外の教育関係者や生徒、学生の教育旅行誘致にもつなげられるという。

 河上准教授は「少子高齢化の進む美浜町で実現可能な観光行政を行っていくためには、カナダ移民の地域資源としての価値が分かる人を育てながら、同じくその地域資源を大切にしてくれる訪問客をターゲットにする必要がある」と強調し、「ルーツ・ツーリズムを地域に根差しながら、グローバルに発展させていくこともできる。プライバシーの保護にも配慮しながら町と一緒に進めていきたいので、協力をお願いします」と呼びかけた。

 河上准教授の前には地方創生事業で日ノ岬・アメリカ村再生協議会長を務めた吹田市立博物館特別館長の中牧弘允さんが、「ミュージアムの社会的役割と文明史的貢献」をテーマに講演した。