作品の写真を手に黒井士長㊧と森本消防士

 消防隊員が機器の開発や改良を行い、より使いやすくしたものや論文を発表する2022年度の県下消防研究発表会が14日、和歌山市消防局で開かれ、日高広域の黒井郁弥士長(31)・森本敦貴消防士(22)組が最優秀に次ぐ優秀賞を獲得。秋に書面開催される第62回全国消防長会東近畿支部消防研究会への出場を決めた。

 県下消防研究発表会には論文、開発、改良を合わせて10消防本部から13作品が出品され、県内の消防長らが「利便性」「性能・安全性」「費用対効果」「独創性」「論旨の明確さ」について採点評価(点数は非公開)。上位から最優秀賞1点、優秀賞2点を選び、上位3点が東近畿大会へ推薦される。

 黒井・森本組は「可搬式ポンプ水平装置の開発」と題し、可搬式ポンプの4カ所の持ち手を取り外し、吸水口側以外の3面に「コ」の字型の持ち手を付け、斜面での使用時に水平を保つため、吸水口側のフレームに3段階に伸縮可能な水平装置を取り付けた。

 可搬式ポンプは、ポンプ車が進入できない火災現場で、水利部署や中継放水の際に欠かせない資機材だが、必ず水平で安定した場所で使用しなければ、燃料タンクが傾き燃料供給ができなくなってエンジンが停止。さらに斜面での使用は部署位置までの搬送が困難だったり、振動によって転落したりという問題があり、「今回の開発で燃料タンクの傾きが原因のエンジン停止、振動による可搬式ポンプの移動がなく、複数人での安全な搬送も可能になる」と力を込めた。

 優秀賞に2人は「うれしいです。開発は実際の現場で苦慮したことを、どうにか改善できないかとの思いがきっかけ。所属する南部出張所をはじめ消防本部全体で取り組んだ結果です」と笑顔。「今後も日ごろから問題意識を持って、課題をそのままにせず、積極的によりよいもの、活動につなげられるよう業務に当たりたい」と話していた。