Japan is back――。第2次安倍政権発足直後の2013年2月、ワシントンのシンクタンク、CSISで安倍首相が講演した。前年、「日本が二級国家になる」との報告書をまとめたCSISに乗り込み、日本は二級国家でもないし、今後もそうならないと主張した。


 経済、軍事で台頭する中国、逆にかつての力と存在感を失いつつある米国。その間で常に我が国の国益と未来を考え、揺るぎない国家観を持って戦略的な外交を展開。「日本は戻ってきたぜ」の言葉通り、長期に安定した政権で国際社会の信頼を完全に取り戻した。


 北朝鮮による日本人の拉致問題では、父晋太郎氏の秘書時代から被害者家族に寄り添い、一貫して最大の理解者であり続けた。家族、救う会のショック、本人の無念さはいかばかりか。


 最大の脅威である中国に関しては、9年前の衆議院予算委員会での石原慎太郎氏とのやりとりが思い出される。石原氏は尖閣諸島への挑発に対し、「(日本が)刀を抜くのはバカだが、寄らば斬るぞと鯉口を切る決心をしなければ、毅然とした態度を求める国民の要望に応えられない」と、安倍首相の覚悟を問うた。


 安倍氏は我が国の領土を断固守り抜くと、従来のスタンスを繰り返すにとどめたが、ウクライナ危機で自衛力の重要性、同盟・友好国との連携強化の必要性が自明となり、先の参院選で自民党が大勝したいま、為政者は石原氏のこの言葉を思い返さねばならない。岸田首相は早期の改憲発議を目指すと明言した。


 国民にすりこまれた銃撃の瞬間の映像は、背後から狙われる日本の未来の予知夢にも見えないか。国民を敵から守るために必要なものは何か。安倍氏の遺言として受け止めたい。(静)