著者は大学卒業後、2009年に学習塾に勤務しながら執筆した、「浜村渚の計算ノート」という作品で、「第3回講談社Birth」の小説部門を受賞し、小説家デビュー。小説執筆だけでなく、漫画原作も手がけています。著書に「国語・数学・理科・誘拐」「悪魔のトリック」「浜村渚の計算ノート」「利根川りりかの実験室」などがあります。本作品は、双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2017年から2018年にかけて掲載された作品をまとめたものです。


 昔ばなし、な・の・に、新しい! 「浦島太郎」や「つるの恩返し」といった皆さんご存じの「日本昔ばなし」を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ。誰もが知っているあの物語が、謎だらけに大変身! 「一寸法師の不在証明(一寸法師×アリバイトリック)」「花咲か死者伝言(花咲かじいさん×ダイイングメッセージ)」「つるの倒叙がえし(つるの恩返し×倒叙トリック)」「密室龍宮城(浦島太郎×密室トリック)」「絶海の鬼ヶ島(桃太郎×クローズド・サークル)」の全5編を収録。


 読みやすく、昔話のあらすじを知っていればすらすら読めてしまう一冊です。一話ずつ完結し、ミステリーのあらゆるタイプを網羅している(と解説に書いてあった)ので、勉強にもなりました。どの話もそれぞれに趣向が凝らされた仕掛けが施されていて、かなり手が込んでいます。昔話ならではの解決法、昔話だから使えるアイテムの数々と、特異な世界設定をしっかり使いこなせている点もおもしろかったです。個人的には、読み始めは違和感しかありませんでしたが、最後に意味が分かる「つるの倒叙がえし」が好きです。西洋の昔話をモチーフにした「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」などの続編もあるので、そちらも読もうと思います。(米)