今年の夏には参議院選挙が行われる。公正公平な選挙は当たり前だが、「投票したはずの候補者の得票がゼロだった」という事件が実は起きている。

 2019年7月の前回の参議院選挙比例代表を巡り、市民らが投票用紙の再点検を求めた訴訟で、大阪地裁堺支部が原告側の請求を棄却した。この訴訟は堺市美原区の開票結果で、共産党副委員長の山下芳生氏の得票がゼロだったことを受けて争われた。山下氏は結果的に全国で4万票以上を得て当選したが、投票したとする市民らが投票用紙の再点検を要望したもの。

 参議院比例代表の得票ゼロを巡る事件は他にもある。2013年7月の参議院選挙では、香川県高松市で自由民主党の衛藤晟一氏の得票数がゼロとなった。衛藤氏の支持団体からの刑事告発を受けて高松地方検察庁が捜査した結果、2014年6月、元高松市選挙管理委員会の容疑者ら6人が公職選挙法違反等の疑いで逮捕された。

 調べによると、6人は開票作業において白票の数を実際より329票水増しするとともに、衛藤氏の票を312票減らしたという。

 このような事件は、直近3回の参院選で少なくとも7件起こっている。原因は開票作業の複雑さではないか、と指摘する声もある。2001年から非拘束名簿式が採用されたことで、従来は政党名のみの記載だったが、候補者名でも投票できるようになり、投票用紙を200近くに分別しなければならないのだ。

 事件を防ぐには電子投票が最も良いのではないかと思うが、電子システムに不慣れな高齢者等も多いので難しいかもしれない。何より、最も大切なのは丁寧で正確な作業と選管職員たちの誠実さにほかならないが。(也)