毛糸を巻き付けたレンガを磯場に設置
レンガから伸びたヒジキ

 激減している海藻のヒジキの復活に向け、串本町の県水産試験場が考案した人工種苗育成が順調な成果を上げている。毛糸を巻き付けたコンクリートレンガにヒジキの受精卵を付着させて磯場に設置する方法で、昨年度にみなべ町などの3カ所で試験的に行った結果、天然のヒジキと遜色のない成長を確認した。今後、普及につながれば、増産が期待できるという。

 ヒジキは干潮時に岩が現れるような磯場で育つ海藻類。国内で消費されるヒジキの多くは中国や韓国などの外国産で、近年国産の人気が高まっているが、収穫量は減少傾向にあるという。

 同水産試験場は「天然ヒジキの増産に向けた移植技術の開発」をテーマに、2018年から移植の技術開発を始めた。試験は、母藻を入れた水槽で採卵、毛糸を巻き付けたコンクリートレンガに受精卵を付着させ、そのレンガを水中ボンドを使って磯場に取り付ける方法で実施。毛糸は夏場の乾燥から守るという役割を果たす。

 昨年7月から8月にみなべ町の32カ所、白浜町の24カ所、串本町の84カ所に、大きさ10㌢四方(白浜町は10㌢×20㌢の長方形)のレンガを設置。12月にみなべ町と串本町で調べたところ、全てのレンガでヒジキが成長し、1つのレンガから平均30個体(長さは平均13・5㍉)が伸びていることが確認された。白浜町の試験では沖磯に設置されたが、今年3月の調査で天然のヒジキと生育が変わらなかったという。

 水産試験場は「今後は現場の意見や要望を基にさらに改良を重ね、ヒジキの増産につなげていきたい」と話している。