30年ぶりくらいに道成寺の会式を見物した。 小学生のとき、自宅最寄りの和佐駅から1駅電車に乗って出かけた思い出がある。和佐小学校は会式の日は午後から休校で、友達同士子どもだけで電車に乗る貴重な体験にドキドキし、ちょっと大人の気分を味わうビッグイベントだった。そんな話を社内ですると、由良や美浜では午後からも通常通り授業があり「行ったことがない」「あるのも知らなかった」という人も。意外と地域を限定した催しだったのだと知り、個人的にはもっと広く子どもたちが見物できればいいのにと思った。

 会式と言えば「ジャンジャカ踊り」。約50年前、安珍清姫会によって作られたもので、清姫の化身「蛇(じゃ)」と安珍を一途に思う清姫の恋心を表現した踊りの両方からなる。踊りの方は、一時絶えてしまったというが、地域で日本舞踊をたしなむ人らによって復活され、小さな女の子も参加し今年も花を添えた。私が子どもの頃の蛇は、安珍清姫物語と同じように野口橋近くで日高川を渡っていたが、今は藤田側の河川敷からスタート。安全面の考慮など少しずつ形を変えながらでも、継承されていっているのを実感した。

 2年間新型コロナで中止を余儀なくされ3年ぶりに実施された会式。今年開催に踏み切るまでも検討が重ねられたのだろう。中止を決めることは簡単で3年目ともなれば慣れてきてしまう。しかしこのようにコロナとうまく付き合いながら、これまでの生活を取り戻していかなければならない。特にあっという間に過ぎてしまう幼少期に刻まれるかけがえのない経験に大きな差が出てしまう。プロ野球の観客も人数制限が解除され、ハワイツアーも再開。そろそろマスクを外す心の準備が必要だ。(陽)