新しく導入されたドライブシミュレーター

 御坊市のひだか病院はリハビリテーションセンターに、患者の自動車運転再開に向けた支援で、運転能力の評価・訓練をサポートするための機器「ドライブシミュレーター」を導入した。頭部外傷や脳血管障害の患者らが運転復帰に向け、免許センターで適性検査を受ける際に必要となる医師の診断書作成に対応。これまでの机上の検査に加え、シミュレーターで運転に対する評価、訓練を実施し、運転の再開に役立てる。

 自動車の運転に要求される認知・予測・判断・操作という総合的かつ瞬間的な認知、遂行機能の能力に障害が生じる可能性がある頭部外傷、脳梗塞やくも膜下出血といった脳血管疾患の患者は、免許センターでの検査で安全に運転できるかの適切な評価、判断が求められ、その際に医師の診断書が必要になる場合がある。

 同センター科長の橋尾学さん、主任作業療法士の坂田慎介さんによると、「運転しても大丈夫だろうか」といった自身の運転能力を知りたいという患者からの多くの声に応えようと、県内の病院で6台目、自治体病院、日高地方では初めての導入となった。購入費は約212万円。

 シミュレーターには反応検査、運転操作課題、危険予測体験、総合学習体験、環境別走行体験、ファンドライブ、ロングコースの各コースがあり、運転環境の模擬的な再現によって運転能力の評価や訓練を実施。リアルなまちなかを走行する中で危険なシーンも疑似体験でき、患者本人の自己認識と実際の運転能力の差を縮めるため積極的に使っていく。

 使用は医師の指示を受けて作業療法士が各患者に合ったプログラムを作成。運転の再開に向け、問診や身体機能・神経心理学的検査に加えて、ドライブシミュレーターによる評価、訓練を行う。当面は脳外科の入院患者を対象に使用。今後、整形外科や外来患者の対応も検討するとともに、停止車両評価や教習所との連携による実車評価も取り入れていきたいという。

 同センター長で整形外科部長の宮本選さんは「当地方でも自動車の運転が必要な方の割合は多く、また、当院でも脳や身体に障害がある方や認知機能に問題がある方も多くおられます。リハビリテーションセンター、特に作業療法の分野でドライブシミュレーターを通して、当院を利用していただく患者さまや御坊日高地域の方々に貢献できればと考えています」と話している。