「Moder」を手に木村さん

 近畿大学薬学部(東大阪市)と株式会社KIM(御坊市名田町楠井、木村真也代表取締役)が、入浴剤等に利用できる精製木酢液「Moder」(モダー)を共同開発し、発売した。紀州備長炭の炭焼き職人の木村代表(41)=日高川町三十木=らが、同部の多賀淳教授に「炭の木酢液をもっと広げたい」と相談し、紀州備長炭の製造時に採れる木酢液の臭いと色を、低コストで低減させる方法を開発。木村代表も「お客さんや業界、地域の活性化に役立てれば」と期待を込めている。

 共同研究は同大学が2017年に包括連携協定を締結したアイザワ証券株式会社(東京都)との連携事業「産学連携によるビジネスマッチング」で実現した。

 高級炭の紀州備長炭は県を代表する名産品の一つ。木酢液は炭を製造する際に副産物として生成される。酸性で刺激臭のある褐色の液体。薄めて入浴剤や土壌改良剤として使用されているが、木村代表によると、ほとんど廃棄されている。

 臭いや色調の強さから抵抗感のある人も多く、有害物質が含まれる場合があるとの報告もある中、多賀教授が県と県木炭協同組合の協力を得て、できる限りそのままの形で有効利用するため、適度に臭いや色を低減させる研究を行い、精製に有害物質を取り除く独自のろ過方式を採用。開発された精製木酢液は、50~100㍉㍑を浴槽(約200㍑の湯)に加えると弱酸性を示し、弱酸性浴を楽しむことができる。

 木村代表は大阪出身。2011年、母が当時住んでいた三十木が紀伊半島大水害で被災し、約3カ月間ボランティア活動した際、まちや紀州備長炭に興味を持ち、Iターン。炭焼き仲間になった日高岳人さん(41)とともに、生産者の収入アップや新たななり手を含めて業界を盛り上げようと、木酢液の有効利用を発案、近畿大学へ相談した。

 製造はKIM、販売は日高さんが代表取締役を務める株式会社MARUGAKU(宮崎県)。商品は500㍉㍑入り(税込み2500円)で、「Amazon」等での通信販売や御坊市のはし長、日高川町の道の駅SanPin中津、美山ふるさと産品販売所、田辺市龍神村の道の駅龍游などに置かれている。

 木村代表は「木酢液を有効利用したSDGsの取り組み。安全で天然成分100%。肌トラブルで困っている人の助けになれば」と商品をPRし、「入浴剤以外にもいろんな展開を考えています。業界や地域に貢献できれば」と話している。問い合わせは専用のお客様相談室℡0120―002―976。