最新のがんの検査装置 「PET-CT」

 和歌山市小松原通の日本赤十字社和歌山医療センターは、今月11日からがん検査装置「PET(ペット)―CT」の運用を開始した。がんの位置が分かるCTと、糖代謝の高いがんを見つけるのが得意なPETを組み合わせた装置。さまざまながんの診断に有効で、保険が適用される。装置の導入によってがんの検査から診断、治療までをセンター内で一体的に運用できるようになる。

 PET―CTは、「positron・emission・tomography(陽電子放出断層撮影)」と「computed・tomography(コンピューター断層撮影)」の略。PETとは、がん細胞が正常な細胞に比べてブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査方法で、ブドウ糖に放射性フッ素を付加した薬剤「FDG」を投与し、集中する部位を映し出す。集積が進んでいる部分はがんが活性化している可能性がある。

 CTは、エックス線で3次元的に診断する方法。形状の異常などを観察することはできるが、実際にがんなのか、どの程度活動性があるのかなどは追加検査をしないと判断できないことがある。

 同センターはPET検査をこれまで別の施設に依頼していたが、PETとCTの画像を組み合わせて見ることで、より正確な診断が期待できる。大学でPET―CTをすでに経験している医師もいるため、運用には問題がないという。当初は一日最大8件で対応、状況に応じて増やしていくことも考えている。

 導入したPET―CTはアメリカ製の最新型。装置が出始めた15年ほど前に比べると画像は鮮明で、検査も短時間で済み、被ばく量も抑えられる。検査約1時間前にFDGを投与し、控え室で待機。その後、横になって全身を約20分間撮影する。全体の所要時間は約2時間。

 PET検査で判別しやすいがんは、甲状腺、肺、頭けい部、咽頭、大腸、乳、すい臓、卵巣、子宮体、悪性リンパ、骨腫瘍、悪性黒色腫――など。一方、ぼうこう、尿管、腎臓、前立腺は、薬剤が排せつされる影響から別の検査が必要となることもある。日本人に多い胃がんは、早期でサイズの小さいケースは発見が期待できず、転移や再発の診断などに限られる。胃がんは胃カメラ検査が最も有効とされている。

 医療センターは、2019年に高度な検査や治療ができる施設として、全国に14カ所ある「地域がん診療連携拠点病院」の指定も受けた。昨年1月には総合的な治療ができる「がんセンター」も院内に新設された。

 放射線診断科の梅岡成章部長は「装置導入で全てのPET検査が院内で可能となり、患者の利便性は格段に向上することになる」と強調。がんセンターの機能充実にも大きく寄与するという。