完成した漫画の表紙と内容の一部

 印南町美里在住の漫画家さいわい徹さん(72)=本名・幸徹=が、岡山県備前市の依頼を受けて制作していた伝記漫画「熊沢蕃山」が完成した。

 熊沢蕃山(くまざわばんざん)は江戸時代に陽明学者や政治家として活躍。「自然破壊をすれば自然災害が起こって大変なことになる。山に豊かな草木がなければ洪水が起きる」という学問を広め、土木工事も実践して自然災害対策に尽力した。

 さいわいさんは以前、滋賀県の旧安曇川町(現高島市)の依頼を受けて、同町で陽明学を学んだ熊沢蕃山や同じく陽明学者の中江藤樹、僧侶の青木文教の伝記漫画を描いたことがあった。

 熊沢の伝記漫画を知った備前市教育委員会から、同市でもかつて多大な功績を残した熊沢の伝記を漫画で分かりやすく描いてほしいとの依頼を受け、昨年4月から同市との関わりのあった内容を新たに書き下ろし、一冊の漫画にした。文庫版、119㌻。

 大阪市阿倍野区出身で、美里に移住し22年目。「インターネットの普及でどこに住んでいても漫画の仕事ができるようになりました。僕も移住して新たなテーマの作品を生み出せました。逆にこちらの若い人たちがこちらに住みながら漫画雑誌にデビューすることもできます。僕のような者がここで漫画や小説を描き続ける意味はあるのではないかと思っています」。

 「熊沢蕃山」の完成には、「今日的なテーマを含んだ作品にすることができたと思います。備前市から印南町の図書室や御坊市の図書館に漫画を送ってもらうことにしており、地元の人たちもぜひ読んでいただければ」と話している。