県果樹試験場うめ研究所(みなべ町東本庄)は、梅の優良品種である南高の「低樹高多収栽培マニュアル」を開発した。南高は成長すると高さ4㍍以上になり、青梅収穫時には脚立での作業が必要で、労力と危険が伴っている。そこで、木を切って高さを抑えるカットバック処理に加え、着果量の増加効果がある摘心処理を組み合わせた栽培技術を確立。安全、省力化、高収入の実現に大きく前進する技術になると期待されている。

 南高は樹勢が強く、成木は4㍍以上になる。青梅の収穫には脚立に上って作業する必要があり、労力がかかるだけでなく落下の危険性もある。完熟した梅を拾う収穫に移行する生産者もいて、青梅に対する市場からの要望量を満たしきれないこともあり、課題の一つとなっている。そこで、うめ研究所の土田靖久主任研究員が中心となって5年間、研究に取り組み、栽培技術と作業方法を分かりやすくまとめたマニュアルを3000部作成した。

 カットバックは樹高が高くなる主枝を切る処理のこと。作業の省力化と安全性は大きく向上するが、主枝を切るとその分、収量が減るため、生産者には好まれていない。土田研究員らはカットバックしても収量が減らないよう、摘心処理を行った上で、収量にどのような変化があるかを実証実験した。

 摘心処理は、太い枝からさらに上に伸びる枝を切る処理のこと。枝は放っておけば太く長く伸び、梅の実をつけない「徒長枝」になってしまう。梅の実は細い枝に成りやすい習性があるため、この枝が20㌢ほど伸びる4月ごろに10㌢程度にカット。切った部分からさらに枝が伸びてくるため、5月ごろに再び新しく伸びた枝を5㌢ほど残して切ることで、徒長枝ではなく実のなる枝に変身させることができるという。

 土田研究員らが行った実証実験では、カットバック摘心処理を行った1年目は通常より収量が減るが、2年目で同じになり3年目以降は収量増に逆転。4年目には1年目の1・6倍になり、5年目は大不作の年だったが、通常の木よりも2倍近い収量があり、不作の年に影響を受けにくいというメリットも確認できた。

 枝を摘心しているため秋から冬にかけて剪定作業も楽になり、通常より30%の労力削減に成功した。

 土田研究員は「危ない作業や労力をかけずに収量がこれまでよりアップする効果が確認できたので、ぜひ生産者に実践してもらいたい。青梅で収穫する生産者が増え、市場のニーズに応えられるようになればうれしい」と話している。

 マニュアルやカットバック摘心処理の方法を聞きたい人はうめ研究所℡0739(74)3780。