実の親や、その交際相手による児童虐待の末の死亡事件が後を絶たない。死亡した子に付けられた素敵な名前や、かわいく撮られた写真などが報じられると、「こんなはずじゃなかっただろうに」と胸が痛くなる。
厚生労働省の発表では、1990年度の調査開始以降毎年、児童相談所への虐待相談は増加を続け、19年度は初めて、20万件を超えた。また、この年に表面化した虐待による死亡数は78人に上り、多い年では150人に迫る命が失われている。
最近では、神奈川県大和市で小学1年だった次男を窒息死させたとして、42歳の母親が逮捕された。報道によると、次男はこれまで2度、児相に保護されていた。1度目は、生後5カ月のとき「心肺停止状態になった」と母親の消防への通報で入院した際、次男の兄と姉が、生後間もなく亡くなっていたことから保護。2度目は5年後、1歳だった弟が死亡したことを受けて保護された。児相は施設に入所させようとしたが保護者の同意が得られず、横浜家庭裁判所に審判を申し立てたが却下され、次男は自宅に戻った9カ月後に死亡した。
このような痛ましい事件が起こると、児相の対応の遅れや、マンパワー不足が問題となること多いが、今回は家庭裁判所の判断が疑問視されている。「疑わしきは罰せず」の刑事裁判と違い、児童虐待については、将来起こるかもしれない悲劇を防ぐための判断が必要となる。
統計上の虐待死は氷山の一角で、その3倍という試算もある。見えにくい家庭の中には、格差や貧困、夫婦関係、虐待を受けた経験が生む虐待など深い闇がある。行政機関だけでなく多くの人が家庭に関わって寄り添い、親の救済ができない限り、虐待を無くすことはできない。
(陽)


