県が和歌山市内マリーナシティへの誘致を進めている統合型リゾート(IR)。区域整備計画案を巡って県議会が「内容が不十分」などと説明会を延期したり、市民団体が誘致の是非を問う住民投票条例の制定を求めてそれが議会で否決されたりするなど、物議を呼んでいる。

 計画案によると、コンセプトは「和歌山の自然資源と世界最先端のテクノロジーの融合」とし、観光や地方創生、最先端技術を活用した利便性と循環型社会への貢献の両立などを目指す。国際会議場、展示施設、日本の伝統・文化施設、カジノなど多彩な施設を整備。心配されるカジノ依存対策も具体的にまとめている。各施設への総来場者数は1300万人(30年度想定)、IR施設に対する投資金額4700億円、経済波及効果は建設時7100億円、運営時3100億円、雇用従業員数6200人。厳しい経済情勢の本県にとって夢のような話である。

 ただ、資金計画が現時点であまり明確とは言えない。また、コロナ禍で世界のカジノ事業が低迷する中、新たなカジノ施設がうまくいくのかも心配。そもそも新しい生活様式が求められ、カジノもオンライン化が進められる中で、施設に足を運んで楽しむカジノは将来的にも受け入れられるのかどうか。少なからず不安はある。

 とはいうものの、資金を出すのはあくまで事業者。仮に途中で計画を断念するようなことがあっても、和歌山県が損をすることはない。計画がうまく進めば、それはそれで県に莫大な経済効果が見込まれる。やはりここは仁坂知事も言う通り「可能性にかけて前に進む」のが和歌山の未来にとっていい選択なのかもしれない。

(吉)