閉幕まであと5日、さまざまな競技でさまざまなドラマが生まれている北京オリンピック。立春の開幕から11日が過ぎたが、あえて、特に印象的だった開会式のカウントダウンを振り返らせてもらいたい◆カウントダウンの数字は「24」から始まった。それは古代中国で、暦とは別に季節を知る目安として生まれた「二十四節気」。立春の次に位置する「雨水(うすい)」から啓蟄、春分と、英訳された言葉とともに鮮やかなイメージ映像がダイナミックに映り変わっていく。立春は「beggning of spring(ビギニング・オブ・スプリング)」。きれいな緑色のLEDで、春の始まりを象徴するタンポポの芽吹きが風に揺れる様を表現していたのが強く印象に残った◆春分や秋分、夏至に冬至のほか寒さの極まる「大寒」、虫が冬眠の穴から出てくる「啓蟄」など、現代の日本でもなじみの深い二十四節気。東洋のみずみずしい季節感をオリンピックという場で世界に発信する、素晴らしいセンスだと思った。4月5日頃から15日間に当たる「清明」が「fresh green(フレッシュ・グリーン)」と訳されたのには感動すら覚えた◆開会式ではカウントダウンから各国の入場行進、そして最終の聖火ランナーへ。各国のプラカードが一つに集まり、六角形の雪の結晶の形となったオブジェにトーチが差しこまれ、それがそのまま聖火台となって浮かび上がった。のちに、演出を担当した映画監督のチャン・イーモウ氏がインタビューで「小さな火が世界を明るく照らす」というメッセージを込めたと語るのを見た◆厳しい冬に、この季節ならではのウインタースポーツが生まれた。どんな時期でも光を見いだせると、あらためて思う。

(里)