県が新型コロナのクラスターとなった施設や団体名などを非公表にした。オミクロン株による第6波で高齢者施設でのクラスターが多発しており、非難や風評被害を問題視しての対応だ。

 ただ、県内でも市中感染が起きてどこで感染するか分からない中、住民の不安をあおりはしないか。施設名が分からないゆえに憶測や推測で特定し、関係のない施設に影響が及ぶ懸念はないか。そもそも、今月7日の発表分まで162件のクラスターが発生し、一部の例外を除き公表されてきたが、その辺の公平性はどうなるのか。予想不能なコロナ禍に先を見通すのは困難だが、今回の非公表はいまさら感がある。

 かといって施設名の公表が今後も本当に必要かと問われると、疑問もある。その施設内から不特定多数の人に感染が広がる可能性が低いなら、感染拡大防止の観点から公表する意味はあまりない。また、コロナ病床の逼迫(ひっぱく)を受けて、今後は高齢者施設でも軽症の感染者はその施設で療養してもらうことになった。つまり、これまで徹底的にコロナを排除してきた高齢者施設にとっては、感染者を隔離するなどの措置を取りながらも、まさにウィズコロナで介護を続けなければならない。この苦労や大変さは並大抵ではない。現場で頑張るスタッフを思うと、決して非難や風評被害があってはいけない。

 施設名の非公表はやむを得ないのかもしれないが、公表、非公表の問題でいつも思うのは、住民一人ひとりの意識が最も大事だということ。みんなが正しく理解し、正しく恐れ、正しく行動することができるのであれば、どんな情報でもオープンにできるのだが…。

(吉)