先日、知り合いの読者の方から、「日高新報の配達の人、粋ですね」とラインでメッセージををもらった。一緒に送られて来た写真には、「戸の内は 山茶花咲きて 静まれり 今日ももの置き そつと戸を閉づ」と歌が書かれたメモが写っていて、作者は「配達人」となっていた。

 連絡をくれた読者が、隣に住んでいる高齢のお母さんの自宅に配達する新聞を郵便受けから、玄関の中に配達場所の変更を頼んだそうで、その新聞にある日この歌のメモが付いていたという。歌を受け取ったお母さんはとても喜んで、メモを大切に置いているそうだ。

 なんて素敵な話だろう。短歌の心得がない私には歌のことはよくわからないが、せわしない新聞配達中の1コマを切り取って詠まれた歌には、相手を思いやる姿勢や心のゆとりを感じた。自分たちが作った新聞を読者に届けてくれている人がどんな人なのか、一人ひとりを知る機会がなく、この歌の作者とも面識がないが、同じ「日高新報」に関わる者としてとても誇らしく思った。こんな風流な方法で人を喜ばせることができたり、このことを私に教えてくれて、ほっこりさせてくれたりする人の温かさが、人との距離を保たなければならない現状にまさに必要。

 電車内のいすに寝そべってたばこを吸っていた大人を注意した高校生が暴行され、直接注意するのは危険だからやめた方がいいと言われたり、亡くなった母親の主治医を自殺の道連れで殺してしまったりと殺伐とした事件のニュースが後を絶たない。コロナで社会の閉塞感も漂うが、そんななかにも気持ちの余裕やユーモアを持って、人を思いやれる豊かな心を育てられれば、毎日を少しずつ明るく照らしてくれるだろう。

(陽)