「日本一美しい蛾」が庭に飛来したと、日高町在住の元熊野古道語り部、杉村邦雄さんの連絡を受けて取材した。白と黒に鮮やかな赤と青の模様が入った羽が美しいサツマニシキ。これを見て、今月初旬に84歳で他界された南紀カメラクラブ会長、中西次郎さんを思い出した。以前にこの蛾の写真を見せていただいたことがあったのだ◆中西さんとは筆者の入社後間もない頃から、写真を通じて長くおつきあいさせていただいた。ナベヅルが飛来している、渡りチョウのアサギマダラがたくさんきているなどの情報を寄せてくださったり、キイジョウロウホトトギスがきれいに咲くお宅、アジサイが見事なお宅を紹介してくださったり、いろいろお世話になった。「わしの名前は出すなよ」といつも笑っておられた。だが、ニュース性の高い写真を提供してくださった際はお名前を紹介させてもらった。6年前に和歌山県内で初確認と思われる南洋の美しいチョウ「スジグロカバマダラ」を日高町内で撮った写真は、1面トップで掲載。オレンジ色に黒と白の模様が入った色鮮やかな羽が青空に映える、美しい写真だった◆亡くなる10日ほど前、長いお電話をくださった。いつも飄々とした口調でお話されるが、この時はいつになくしみじみと、「どこかに土地を手に入れて、キイジョウロウホトトギスやササユリやアサマリンドウなど、絶滅危惧種の花をたくさん咲かせたい」と語られた◆ファインダー越しに眺めるだけでなく生き物たちに心を寄せ、花を愛し、虫を愛し、鳥を愛しておられた。極楽浄土の花々も鳥たちも、きっと歓迎していることだろう。謹んでご冥福をお祈りいたします。     (里)