遅ればせながら、筆者も「賀」こと湯川賀弘記者のことを書きたいと思う。10年、20年と共に紙面を作り上げてきた先輩方と違い、筆者が一緒に働いた期間はたったの2年。しかし、この2年の間に、記者として大切なことを教わった。

 筆者が入社した3年半前は社内態勢の過渡期で、新人記者の指導を指示してくれる人がおらず、先輩記者との同行期間もなく、ひたすら資料を見て告知記事などを書いていた。しばらく経つと、たまに取材に連れて行ってもらえるようになったが、先輩の取材を見学したいと思っていたのに、「じゃあ取材して、記事を書いてみて」というもので、戸惑うばかりだった。一人で取材に出るようになっても、「自分の取材は間違っていないか」と不安が付きまとった。そんなとき湯川記者が「どんな取材をすればいいかは記事を読めばわかる」と言ってくれた。手を差し伸べてくれる優しい言葉ではなく、突き放すような一言だったが、目が覚めるような思いだった。それからは、先輩記者の記事を「どんな質問をしているのか」と考えながら読むようになった。そのおかげでいつの間にか、取材中に聞きたいことが自然と湧き出てくるようになった。

 このほかにも、取材時に必要な知識と湯川記者流の仕事に対する考え方などを話してくれ、その上で自分のやり方を見つければいいとアドバイスをくれた。入社して1年は行き詰まってばかりだったが、思い返せばたくさんの言葉をもらい、鍛えられていた。現状を疑問視する力や忖度(そんたく)のない強い倫理観などを尊敬していて、まだまだ教わりたいことばかり。これからも、湯川記者がこれまで書いた多くの記事を読むたびに新たなことを教えてくれるのだろう。    (陽)