写真=完成した試作品をPRする山本さん㊧と早出さん

 田辺市龍神村の紀州材を使った全く新しいスピーカーの試作品が完成し、9月4日から龍神村福井の道の駅「龍游」のGワークスで技術発表会が開かれる。開発したのは、オーディオ好きの早出正さん(74)=白浜町=と、紀州材を長年扱っている田辺市上野の㈱ヤマト建設(山本敏雄代表)。ヒノキなどの無垢材を振動版に使った世界初のスピーカーで、楽器のような音が出るのが特長だ。

 早出さんは長野県出身。大手企業を退職後、2009年に白浜町に移住した。「紀州に来た印を作りたい」と、好きだったオーディオを紀州材で作ることを思いついた。

 スピーカーは振動ユニットからの振動をコーン紙に伝えることで音が出る仕組みだが、振動を直接木に当て、楽器の仕組みで音を出そうと、「紀州ウッドスピーカープロジェクト」を17年にスタートさせた。まず取り掛かったのが、振動版にする厚さ1㍉の木材探し。知人に紀州材を扱っている山本代表を紹介してもらい、山本さんは協力を快諾。龍神村森林組合から仕入れた紀州材を使い、ヤマト建設の技術で厚さ1㍉の振動版を作り、数えきれないほど試作品を製作。木もヒノキやスギのほか、屋久杉や世界の木を仕入れて試行錯誤を繰り返し、約4年がかりで試作品を完成させた。

 ヒノキは緻密な音が出て弦楽器やボーカルに適し、スギなどは力強い音で管楽器やジャズに向いているという。木の振動版を使ったスピーカーユニットとして特許も取得した。         振動版だけでなく、筐体(外観)、台、オーディオラックにも紀州材を使用。スピーカー前面にはヒノキのスリットを取り付け、中のスピーカーや振動版が透けて見えるように工夫している。

 技術発表会は9月26日まで。土日は早出さんが常駐し、レコードを再生する。早出さんは「より楽器に近い音をぜひ一度聴いてほしい。私は専門家ではありませんので、このスピーカーもまだ完成ではありません。いろんな角度からアドバイスいただけるなど、一緒に完成させてくれる仲間を募っていますので、気軽に立ち寄ってください」とPR。山本代表は「建築だけでなく機械との融合など、紀州材の新たな可能性を感じさせられました。紀州材のよさにぜひ触れてほしい」と話している。