イラストレーターやシーグラスを使ったハンドメイドアクセサリー制作など、アーティストが活動する美浜町三尾で、祭りや能、神楽などで使われる「篠笛(横笛)」に、花や着物美人などを彫って色付けした工芸品としても見ごたえのある作品が作られている。
美しく装飾された笛を制作しているのは、三尾で生まれ育った長尾肇さん(67)。約40年前、子どもたちに祭りで吹く笛を教えたのがきっかけで、当時高価だった篠笛作りを始めた。
「最初は見よう見まねで作ったので、いま思えば音が出るだけだった」が、もともとものづくりが好きで手先が器用だったこともあり、「もっといいものを作りたい」と建築関係の仕事の傍ら試行錯誤を重ね、音だけでなく見た目の美しさも追求するようになった。
長尾さんの笛作りは、材料の確保から始まる。ほどよい太さの竹を河原から切り出し、油抜きをして1カ月間室内干しのあと、約5年間陰干し。乾燥した竹に息を吹き込む「歌口」や指で押さえる「指穴」を開け、細い竹の歌口と指穴の間に下絵を描き、彫り、色付けする。塗り重ねた漆に金箔の研ぎ出しなど伝統工芸の手法を用いた作品もある。
工房に並ぶこだわり抜いた作品は、楊貴妃や弁財天、日本人形などの美しい顔立ちと、着物の模様や髪飾りまで繊細で華やかな細工が目を引く。今後は、竹を8つに割り、硬い表皮を内側にして組み直し、漆で塗り固め、山桜の皮を巻いて作る「八割返し」という工法や螺鈿(らでん)細工にも取り組む。
長尾さんは作品の販売や展示などを行っていないが、「他にはないものだから」と周囲にも勧められ、「最近は、納得できるものが作れるようになってきたので皆さんに見てもらい、小さなことですが三尾から発信し、地域の活性に役立てられれば」と話している。
写真=自宅の工房で完成した笛を手に長尾さん


