写真=藤本さんに付き添って歩くシン君

 新型コロナの感染者が全国的に減少傾向にあるとはいえ、まだまだ油断できず、厳しい寒さとともに閉塞感が漂うなか、心温まるホットな話題が編集部に寄せられました。シルバー歩行車を使って歩く1人暮らしのおばあちゃんのそばに、いつも付き添って歩く一匹の飼い猫。通院の際はおばあちゃんが出てくるまで外で待ち、他の患者さんらからも愛される人気者だそうです。いったいどんな猫ちゃんなのか、さっそく取材にうかがいました。

 おばあちゃんは、御坊市薗、小竹八幡神社の近くに住む藤本京子さん(87)。高齢のため、外出するときはシルバー歩行車を使って歩いており、そばにはいつも飼い猫のシン君(オスのキジトラ)の姿があります。

 近所の人たちにとって、藤本さんとシン君が一緒に歩いているのはおなじみの光景。藤本さんが定期的に受診している自宅近くの山羽胃腸科内科へ行くときも、藤本さんが「先生とこへ行こか」と声をかけると、シン君はうれしそうに尾をピンと立てて、ゆっくりと歩く藤本さんの後ろをついて歩きます。

 診療所で藤本さんが診察を受けている間は、表にあるベンチにちょこんと座り、藤本さんが出てくるのをじっと待っています。藤本さんが出てくるとまた一緒に、歩行車を使ってゆっくり歩く藤本さんを見守るようについていきます。山羽義貴院長やスタッフからもかわいがられていて、シン君は「外からガラス越しに藤本さんの様子を見たり、ほかの患者さんに頭をなでられたりしながら、いつもお利口さんに待ってます」とのこと。

 シン君が藤本さんと出会ったのは2年前。野良で生まれてまだ小さかったけど、グラウンドゴルフの帰りに歩行車を押しながら歩く藤本さんを見て運命的なものを感じたのか、まだ頼りない足取りで追いかけてきたそうです。でも、そのころは前に飼っていた猫が亡くなったところだったので、「もう猫は二度と飼わない」と決めていました。何度か国道を渡って、初めて出会った場所へ返そうとしましたが、そのたびに戻って、藤本さんが根負けするかたちで飼うようになったそうです。

 シン君は「僕の役目はカカ(藤本さん自称)を守ること」とばかり、きょうも藤本さんの周りをちょこちょこ。藤本さんは、「シンは人懐っこくて甘えた。家の中でも起きていればトイレにまでついてこようとするほど。デイサービスやサロンへ出かけるときはお留守番させるんですが、そのときはいつもついてきたがるので大変。近所の方にも大事にしてもらえてありがたいです」と話しています。