F1の世界ではアクセルとブレーキを右足だけで操作する「ヒールアンドトゥ」というテクニックがあり、レース中の事故で亡くなった天才ドライバー、アイルトン・セナもこれを駆使して優勝を重ねた。

 そのセナの死から26年がたったいま、まったく違う世界でアクセルとブレーキの操作が注目されている。コロナ禍の観光を加速する「Go To トラベル」がアクセル、逆に人の動きを止める飲食店の時短営業などがブレーキ。

 全国的に第3波が押し寄せ、東京都は酒を提供する飲食店とカラオケ店に営業時間の短縮を求め、感染爆発が目の前ともいわれる大阪府や北海道も飲食店に時短営業を要請。他県でも同様の動きが広がりつつある。

 米国の大手製薬2社がワクチン臨床試験の中間結果を公表した。ファイザー、モデルナともに90%超という驚異的な有効率で、株式市場はNYも東京も記録的な終値をつけるなど沸き立った。

 英国の大手アストラゼネカも臨床試験結果を発表した。有効率は米国2社に比べると低い70%だが、こちらは値段がかなり安く、米国2社とは違って通常の冷蔵庫で保管できるため、途上国などへの供給に期待がかかる。

 一連のニュースは全世界に朗報。各国で一日も早い承認、供給が期待される。米国では早ければ来月10日にFDAの緊急使用許可が下り、翌日にも供給を開始できる見通しだという。

 これらの新薬が本当に発表通りの有効率であるなら、多くの国民が接種すればウイルスは急速に姿を消す。日本では第3波には間に合わないだろうが、乗り越えた先にはワクチンがある。国民はまだしばらく辛抱し、政治家は高度なペダルワークを。(静)