落ちアユの季節を迎えた。年魚のアユはこの時期になると、抱卵し、河口域の産卵場所へと下り始める。筆者が小学生だった40年ほど前、自宅近くの河川では落ちアユが群れを成し、真っ黒になっている光景が見られた。しかし、近年はほとんど見られない。理由はアユの絶対数が少なくなったからだ。抱卵した落ちアユが多い年ほど、産卵量も多くなる。単純な話だが、落ちアユの数量は翌年の海産アユの遡上に大きく影響する。

 日高川では2011年9月の紀伊半島大水害の影響で、落ちアユが激減した。11年春の遡上量は459万匹だったが、翌年の遡上は17分の1の27万匹に減少。日高川漁協は大水害の翌年から親アユの放流を開始し、徐々に成果が表れ始め、17年からは400万匹を超える遡上が確認されるようになった。

 しかし、親アユの放流事業には資金が必要だ。漁協では遊漁料が減少するなどで厳しい財政状況の中、放流事業を続けるため4月に企業や個人に資金提供の協力を呼びかけ、9日までに340万円が集まった。今後はその資金を活用し、11月初旬には御坊市野口と日高川町小熊にまたがる小熊大橋上流に産卵場所を整備し、育成した親アユ4万匹を放つ。

 アユが増えると、釣り人も増える。日高川は全国的にも有名で、釣り具メーカーなどの釣り大会が開かれることもある。それは地域の活性化にもつながる。

 漁協は近く、1口3000円の支援者に対してアユの加工品セットをプレゼントするという購入型ファンディングを開始する予定だ。日高川のアユ釣りファンは多い。多くの人たちの支援で、たくさんのアユが育つ豊かな河川となることを期待したい。(雄)