「木(気)になる人に肥え(声)をかけることからまちづくりは始まる。木が育っていくとやがて林になり、森になる。そうやって人の輪がひろがっていけば地域の活性化につながっていく。まちづくりは人づくり」。15年ほど前、担当していた印南町で地域活性化に熱心に取り組んでいた当時の役場職員の言葉が今でも心に残っている。観光資源を生かした体験やイベントなどさまざまなアイデアがあっても、最終的には「誰がやるのか」に行きつく。やる気や情熱を持った人が地域活性化の原動力である。

 みなべ町の住民有志が、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」をもっとPRしたいと、みなべ特産の南高梅と、同じ世界農業遺産認定地域である石川県能登地方の特産である「能登の塩」とコラボした梅干し作りを進めている。農業遺産コラボ商品はユニークな取り組みだ。ほかの認定地域ともコラボできる可能性を十分秘めている。静岡県掛川のお茶とタッグを組んで「梅茶漬け」なんていうのもできるかもしれない。アイデアもさることながら、やってみようと行動に移す人たちがいることが何より心強い。

 きっかけは、新型コロナ禍で長期間帰省していた大学生が、「この時間を活用して生まれ育った地域のために何かできないか」と相談したことがきっかけで取り組みが動き出した。心の中で思うだけでなく、声をかけたことから始まったのだ。また別の人に声をかけ、林となっていく。今後は能登の人と交流を進めていく計画で、林はもっと広がっていくだろう。やがては全国に森ができ、農業遺産地域同士のつながりが深く、強まっていけば素晴らしい。少しの行動がまちを変えていく。(片)