「暑さ寒さも彼岸まで」と古来いわれる通り、秋彼岸の訪れと共にかつてないほどだった今年の夏の暑さも影を潜め、空気は爽やかに冷えてきた。「爽やか」は初夏などにも使いたくなる言葉だが、本来秋の季語。澄んだ空気の中、深い色の空の下に彼岸花の鮮やかな赤も並ぶ◆四季があることは日本の素晴らしい特徴の一つ。しかし今年は学校の始まらない春、海開きや花火大会のない夏と経験したことのない季節を重ね、そして祭りのない秋を迎えた。季節が移り変わっていく、それ以上に時代が移り変わりつつあるのを感じる。後世、2020年は間違いなく、人類が未知のウイルスの脅威に直面し経済活動を縮小した年として記録される◆一方で、イベント等は対策を講じながら少しずつ再開。「新型コロナウイルスとの共存を考える段階に来ている」といわれている。インフルエンザの発症者数が前年同期に比べて劇的に減少しているという、コロナ対策の思わぬ副産物的な効果も出ている。世界が国や民族を超えて知恵を出し合うべき今、「共存を考える」という言葉はコロナ対策に限らず、あらゆる局面でキーワードとなりそうな気がする◆幼い頃、彼岸花は美しいが毒があるから「触ってはいけない」と教えられた。しかし、実はすりおろして長時間水にさらすなど毒を抜けば食用・薬用にもでき、飢饉の非常食として植えられたという説もあるそうだ。ウイルスも「絶対悪」ではなく、生物の進化にかかわるなど一定の役割があるという◆生活のあり方に始まり、あらゆる価値観を一から見直してみる。そんな新たな季節、新たな時代に来ているのかもしれない。(里)