美浜町のカナダミュージアムで、特別展「アメリカ村の看板婆さん 中津フデ展」がスタートした。1年前から三尾に滞在し、近く帰京、復学予定の東大生岩永淳志さんが企画。明治に生まれたフデさんの波乱の人生が紹介されている。

 この展示会に合わせたわけではないが、8月の盆過ぎから日系カナダ移民に関する取材を進め、昨日、ようやく記事を掲載できた。きっかけは、印南町の近現代服飾史研究家古田和豊さんから紹介された一冊の本だった。

 ノンフィクションライター工藤美代子さんが37年前に発表した「黄色い兵士達」。いまから100年以上前、カナダへ渡った日系人たちがヨーロッパで勃発した第1次世界大戦を機に白人と手を組み、国家のためにともに戦おうと立ち上がった。

 背景には、渡航者が増えるにつれ高まる白人社会の日系移民に対する差別、排斥があり、カナダに忠誠を尽くし、カナダ軍として血を流すことによって、渇望していた選挙権が与えられ、自分たち日系人の地位が向上するという期待が大きかった。

 約200人の日系人が個人志願の義勇兵として軍に採用され、フランスのアラス戦線へ送られた。日系人義勇兵を含むカナダ軍はヴィミー・リッジの戦いで活躍をみせたが、この戦争で日系人は54人が戦死、93人が負傷した。

 日高地方からも三尾出身の尾浦熊吉さん、二井藤市さん、浜出文吉さん、由良出身の原新吉さんの4人が出征し、尾浦さんと原さんは戦死。二井さんと浜出さんは生き延びたが、いまとなっては戦後の消息を知る手がかりはもうない。

 言葉も文化も違う異国に渡り、差別と闘いながら強く生き抜いた移民たち。時代とはいえ、そのうねりはあまりに激しい。(静)