印南町教育委員会が、由緒ある切目王子史跡(西ノ地)の将来的な世界遺産登録を目指して本腰を入れる。現在、史跡は県指定史跡となっており、世界遺産登録への前段階として、まず国指定史跡を申請する予定。近く提出資料となる地形図などの作成を業者発注するとともに、ユーチューブの史跡紹介動画も作って地元住民らの機運をさらに盛り上げていく。

 熊野古道九十九王子はかつて熊野詣の途中で儀礼を行った神社で、切目王子はその中でも特に格式が高い五体王子の一つ。切目神社旧記によれば崇神天皇(第10代天皇)の頃の67年創建とされる。熊野詣で多くの法皇、上皇、貴族らが参拝。1200年の後鳥羽上皇の3回目の熊野詣では切目王子で「遠山落葉 海辺晩望」を歌題に歌会が開かれ、後鳥羽上皇や藤原家隆、飛鳥井雅経、寂蓮法師らが懐紙に歌をしたためた。これがいわゆる「切目懐紙(熊野懐紙)」で、1678年に京都西本願寺に奉納され、現在も国宝として同寺に所蔵されている。また、高野・熊野などの「紀伊山地の霊場と参詣道」は2004年7月、世界遺産に登録されたが、切目王子は熊野の入り口とされている。

 印南町では昨年12月、神社前にトイレを整備し、切目王子ゆかりの石見神楽も奉納。地元有志でつくるうらしま会(寺下鎮雄会長)もかねて看板設置や公園整備などで知名度アップに取り組んでいる。県議会では今年6月定例会で坂本登議員が世界遺産登録を提案。仁坂吉伸知事も前向きに取り組む考えを示した。

 同町教育委員会では世界遺産登録の前に、現行の県指定史跡(1959年1月8日指定)から国指定史跡への格上げを目指す。申請は教委から県を通じて文部科学省に行うが、その添付資料となる地形図、範囲指定図、地籍測量図の作成を10月中に業者に委託し、年度内に完成。申請は来年度になる見通し。地形図などの作成委託料は90万円で、町議会9月定例会(16日閉会)で承認の補正予算に計上されている。切目王子物語の紙芝居のユーチューブ動画も作成しており、10月中に出来上がる。

 平尾潔司教育長は「以前も世界遺産登録の話はあったが、実現しなかった。いま再び機運が盛り上がってきており、大きなチャンス。県と協力しながら一つ一つ進めていきたい」と話している。

 現在、町内に国指定史跡はなく、切目王子が指定されれば初となる。

写真=歴史的に格式高い切目王子神社