県立近代美術館、社会福祉法人和歌山県福祉事業団主催の第2回「おでかけ美術館」が10日から10月25日まで、御坊市御坊の「ぎゃらりーなかがわ」(旧中川邸)で開かれる。和歌山市出身、大阪市在住の画家田中秀介さん(34)の作品を展示。会場は「日高御殿」とも称された国の登録有形文化財で、田中さんは「このような『和』の建物で作品を展示するのは初めてで、とても楽しみです」と話している。

 同館が昨年からスタートした企画で、3年がかりで紀南、紀中、紀北を巡回。昨年は太地町で行われた。今回は、今年の「なつやすみの美術館」の内容を再構成してぎゃらりーなかがわで展示する。

 田中さんは1986年、和歌山市生まれ。現在の紀の川市で育ち、貴志川高校から大阪芸術大学美術学科卒。個展やグループ展で精力的に作品を発表し、昨年開かれたボーダレス・アートミュージアムNO│MAの「忘れようとしても思い出せない」などに選出。清須市のはるひ美術館で個展「田中秀介展~カウンターライフ~」を開催。日常をちょっと違った視点で捉えた作品などを手がけており、「なつやすみの美術館」では新作「ここまでの先」「寸前に我なし」「晴れて虚勢」などの油彩画を展示した。

 会場となる「ぎゃらりーなかがわ」は、中川家7代当主の中川計三郎氏が長年の歳月と多くの財を投じて建築した建物で、1938年に完成。複雑に設けられた屋根の意匠の重厚感から「日高御殿」と呼ばれ、博物学者の南方熊楠、第43代総理大臣の東久邇宮稔彦王も逗留した名家。玄関を入ると正面が中庭で、中には昭和初期のたたずまいを残した洋風の応接間もある。玄関脇座敷の格子は上下の板を曲面に彫り込むなど繊細なつくり。取り壊される可能性もあったが、和歌山県福祉事業団がギャラリーとして生まれ変わらせた。

 作品は約40点で、8日に搬入。初日の10日は田中さんも終日会場で来場者を迎えることになっており、「どの部屋にどの絵を飾るか、考えるととても楽しみです」と話している。県立近代美術館では、「日常の光景を奇想天外な出来事のように描き出す、田中秀介さんの不思議な作品世界を多くの方に楽しんでいただけたらと思っています」と来場を呼びかけている。入場は無料。休館は水曜、開館時間は午前10時から午後4時まで。

 当初はバスを貸し切って地元の中学生を招待する計画も立てていたが、新型コロナで断念した。

写真=田中さんの作品「晴れて虚勢」(2019年)