熊野古道九十九王子の中の五体王子の一つ、印南町切目王子神社旧跡の歴史を広く知ってもらおうと、地元有志でつくるうらしま会が4年前から、地道な活動を続けている。同神社旧跡の一角にゆかりの木を植樹するなどして「切目懐紙なぎのさと公園」を整備。昨年は紙芝居をつくり、今年は旧跡にまつわる貴重な文献を書き下した説明看板なども設置。その熱心な活動には頭が下がる。
切目王子について名前を聞いたことはあったが、印南町を担当するまで恥ずかしながらあまり詳しく知らなかった。1200年、後鳥羽上皇が切目王子で開いた歌会の話が有名で、その和歌が書かれた切目懐紙は国宝になっている。また、全国にゆかりの神社があり、島根県西部(石見地方)と広島県北西部(安芸地方北部)の伝統芸能の石見神楽には、切目神社ゆかりの演目もある。うらしま会の寺下鎮雄会長によると、切目王子は調べれば調べるほど奥が深く、「世界遺産としての価値は十分」と話す。確かに鎌倉時代の曼陀羅図には、切目王子が熊野の入り口として描かれており、世界遺産に認定されている高野・熊野から切目王子を切り離すのは不自然とも言える。
そんな中、今年6月の県議会一般質問で坂本登県議が、切目王子を世界遺産に追加登録するよう提案。仁坂吉伸知事も「まずは国の史跡指定を目指した上で、将来的に世界遺産に追加登録できるように取り組んでいきたい」と前向きだ。
今後の展開に期待が持てるところだが、地域住民の機運も大切。推進委員会を設置したり、アピールイベントを実施するなど、官民一体となって盛り上げてほしい。(吉)