みなべ町芝地内、桜の名所として親しまれている猪之山でここ数年、落石などが目立つようになり、県が「猪之山地区急傾斜地崩壊対策工事」を行うことになった。44年前、地元住民有志がソメイヨシノ200本を植栽、長らく町民の憩いの場として親しまれてきたが、工事のためにほとんど伐採される。15日には猪之山観音で樹木伐採供養が行われた。

 猪之山には1914年(大正3)から稼働していた火葬場が設置されていたが、62年間の役割を終えて76年6月に閉鎖された。そこで、地元住民有志でつくる花の会と芝の法伝寺が跡地に憩いの場をつくろうと発案。同年11月、花の会メンバーと法伝寺役員が山の法面などにソメイヨシノ200本を植栽した。以来、花の会が世話を続け、枯れたり弱った木を何度も植え替えるなどし、猪之山観音堂境内には花見台も整備。南部湾を望む桜の名所として、町民だけでなくシーズンには町外からも多くの人が訪れる人気スポットとなっていた。

 ただ、急傾斜地で大雨が降ると落石や赤土がむき出しになることがたびたび。ふもとには墓地や民家があり、猪之山観音に続く桜並木の町道は避難路にもなっていることから、安全性に不安を抱えていた。花の会もメンバーの高齢化が進み、2年前に解散。近年の異常気象による集中豪雨や近い将来には南海地震の発生が懸念されることから今回、災害が起こる前に対策工事を行うことになった。

 工事が20日から行われるのを前に15日、樹木伐採供養が行われた。法伝寺の田中隨晋住職が法要を行い、施工業者の杉谷産業㈱の井口成実代表、㈱南部建設の池田裕仁代表らが焼香し、工事の安全を祈願した。

 県によると、工期は来年2月だが、避難路となっている町道を通行止めにするため、できれば年内に完了させたいとしている。今回は猪之山観音周辺を対象にした1期工事で、事業全体としては南部保育所付近までの対策工事となっており、2期工事以降は擁壁工事などを進める。

 供養式に出席した芝崎区の松根伸区長は「サクラを切るのは寂しいですが、人命には代えられないので仕方ない。住民が安心できるように安全な斜面になってほしい」と話した。

写真=花見客に人気だった避難路の桜並木