昨年7月、36人が亡くなった京都アニメーションの放火殺人事件で、殺人などの疑いで逮捕された容疑者が9日、京都地裁で始まった勾留理由を開示する手続きに担架に乗せられたまま出廷した。
容疑者は重度のやけどを負い、約10カ月にわたる入院治療で会話ができるまでに回復。5月27日に逮捕され、10日間の勾留が決まり、医療態勢の整った大阪拘置所に運ばれた。弁護側は「勾留の理由や必要性がない」として勾留の取り消しを求めたが、地裁はこれを棄却し、さらに15日まで勾留延長。地裁は勾留理由について、動機や事件の経緯などに関し、第三者を介した証拠隠滅や逃亡の恐れがあると説明した。
会話ができるまでに回復したとはいえ、自分で立ち上がることもできない容疑者を勾留する必要があるのかと疑問視する声もあったが、京都地検は事件当時の精神状態を調べるため、鑑定留置を請求。3カ月間、医師による精神鑑定が始まり、勾留は停止されることになった。
担架に乗せられ、公の場に現れた容疑者の姿は、マスクをした顔でもやけどのあとが見て取れ、火災の恐ろしさを感じさせる。事件後、救急搬送された容疑者は、体の約90%にやけどを負い、皮下組織まで達した重症で救命困難な状態だったが、医師らの懸命な治療で命を取り留めた。
死の淵から生還し逮捕され、裁判へと動きはじめた報道に、遺族はどのように感じているのか。事件はなぜ起こり、なぜ多くの才能ある命が失われなければならなかったのか、本人の口から語られるの待っているのか。極刑は免れないと思うが、容疑者を助けた医師らはその裁判をどう見守るのか。注目を集めるだろう裁判の行方。報道の影にある多くの人たちの思いにも注目したいと思う。(陽)


