日高川町小熊の防災センターで2日、町主催の防災イベント「まなぼう災」が行われ、多くの来場者が訪れた。2011年9月2日から4日にかけて発生した紀伊半島大水害で夫を亡くし、自身も激流にのまれるなど九死に一生の体験をした那智勝浦町の女性は、自作の紙芝居で水害の恐ろしさや早めの避難、命の大切さを切々と訴え、子どもから大人まで約80人の来場者も熱心に聞き入っていた。

 「防災の知識を深め、早期避難の大切さを学ぼう」と企画。非常食の試食体験、体験紙芝居、高校生による防災学習発表・防災すごろく、間仕切り体験などが行われた。

 体験紙芝居を披露したのは、那智勝浦町井関、那智川の近くに住む防災士で紀伊半島大水害語り部の久保榮子さん(77)。自身の体験を基に手書きした約40枚の紙芝居を地域の集い、学校などで60回以上公演している。8年5カ月前の大水害では夫だけでなく知り合いが12人亡くなったとし、なぜたくさんの人が被害に遭ったのか聞き取りなどをした後、自身の経験や調査を人のために役立てたいと「普通のおばさんが変身」して語り部の活動をスタートさせた。

 紙芝居は9月4日午前2時ごろ、避難指示が出る中、自宅にいると娘の部屋から「水が来た」と叫び声が聞こえ、あっという間に床上まで浸水したという場面から。その後、外に出て、激流を渡って3㍍ほど先に逃げようとしたところ、その激流にのまれ、100㍍下流まで一気に流され、溺死しかけた体験を生々しく語った。激流にのまれている間は「もがいてももがいても水面に出られない」「浮いているものは小枝でもつかむ。まさに溺れるものはわらをもつかむ、そんな状況」と説明。歩道のフェンスに引っかかり、危機を脱したかに思えた後も大きな丸太の流木が左脇腹にぶつかったことや軽トラが間一髪、目の前を通過したことを話し、雨がやんで夜が明けると無事だった娘と再会できたが、夫の最期を聞かされたことまで伝えた。

 最後に多くの犠牲が出たのは避難指示の意味が分からないなどの知識不足、それに水害の体験がなかったからだと指摘し、防災の学びの大切さを強調。「近所の2階へ逃げさせてもらった人は助かった」との話を紹介したうえで「隣近所の付き合い、絆を深めることが防災には大事になる」と呼びかけ、「しっかりと天気予報を聞いて、危ないと思ったら半信半疑でも自主的に避難してください。その時点なら助かります。それにどんな大変な状況でも一生懸命生きる、つらいことにも負けないで。命は一番の宝物です」と訴えた。

 紙芝居を見た川辺西小3年の小杉哲平君は「命の大切さ、雨がいっぱい降ったら逃げないとだめだとよく分かりました」と感想を話していた。

写真=手作り紙芝居を披露する久保さん