近年、イノシシやシカの食害でほとんど見なくなったササユリが、印南町川又の真妻神社境内で咲き誇っている=写真=。花が好きだった地元の故畑中實さん(享年79)が20年前、球根1個を植えたのが、いまでは数十本にまで増えた。妻マスミさん(79)にとっては實さんの忘れ形見となっており、「皆さんが見に来て美しいと言ってくれると、夫も喜んでいると思います」と話している。
ササユリはユリ科ユリ属の球根植物。日本特産のユリで、ヤマユリと呼ぶ地域もある。淡いピンクの花を咲かせ、甘い香りを漂わせる。日高地方の山間部でも以前は多く見られたが、いまでは少なくなり、かつて群生地だった日高町原谷は全滅。日高川町美山の里でも人工的に増やす取り組みが行われているが、なかなかうまくいかない状況となっている。
真妻神社では、實さんが山で採取してきた球根を植栽。ササユリは通常、10月か11月に蒴果(さくか)が熟し、種子が風に乗って広がる。地上で発芽するのは、翌々年の春。しかも、野生の場合、初めて花を咲かせるまでに7年以上かかる。真妻神社のササユリも長年の歳月を経て少しずつ増えたとみられる。
實さんは2010年に死去。その後、周囲に柵などをしているわけでもなく、イノシシやシカの食害があった年もあったが、真妻神社のご加護なのか、今年は特にたくさん花を咲かせているという。
マスミさんは「夫は花や木が好きでした。この花が咲くと、夫がササユリのことをうれしそうに話していたのを思い出します」。花は半月ほど前からつぼみを付けて咲き始め、いまがピークで、あと1週間ほど見られそう。


