世界141カ国から3000人を超える博物館の専門家が集う、ICOM KYOTO2019(国際博物館会議京都大会)の一環として9月5日、和歌山県で開かれるオフサイト・ミーティングで、印南中学校(栖原伸精校長)の生徒らが「災害の記憶」と題して発表を行う。生徒らが地元で調査した安政地震の津波で同町の死者がゼロだったという、世界に誇る教訓をアピールする。

 同大会は、各国の研究者らの情報交換の場にしようと今年で25回目、日本での開催は初。9月1日から7日までの期間中は京都市内の会場をメインに基調講演やパネルディスカッション、展示会などを予定。5日は関西周辺の博物館や文化施設、大学でオフサイト・ミーティングが開かれる。和歌山県では、県立博物館と県立近代美術館が会場となっており、印南中は県立博物館で「発掘された災害の記憶を地域住民と共有化するための印南中学校の実践」をテーマに発表するほか、和歌山工業高校が仏像レプリカを展示する。

 印南中では、理科講師兼学習支援員で防災学習担当の阪本尚生氏(63)の指導を受けて2015・16年度、当時の3年生が総合学習の一環で地元高齢者の聞き取りや木札、過去帳、板壁書き置き、津波心得書など過去の文献を調査。その成果を「印南の津波災害」と「印南の災害記録」の冊子にまとめ、宝永地震(1707年)や安政南海地震(1854年)、昭和南海地震(1946年)の被害状況や教訓などを分かりやすく紹介。県立博物館と連携しながら進めた取り組みでもあり、今回、オフサイト・ミーティングの発表団体に選ばれた。近年の大規模地震などで文化財の破損や紛失が問題となる中、地域を巻き込んで防災や文化財保護意識の向上に役立った印南中の取り組みが評価されている。

 当日は3年生や生徒会がこれまでの活動で分かったことなどをポスターやビデオを使って紹介。通訳を介するが、一部、自分たちの英語能力を生かした発表も交える。阪本氏は「世界津波の日(11月5日)の元になった『稲むらの火』の広川町では、安政南海地震の死者が36人だったが、印南町では0人だった。過去の災害の記録を伝承し、津波到達前に全員が避難を完了していたからで、世界に誇れる成功例。その伝承の中心になったのが、印定寺に残る宝永南海地震津波記念碑。こういったことを発表したい」と話している。

写真=地域住民の聞き取り調査を行う生徒ら