少し前、映画「空母いぶき」で首相役を演じた俳優・佐藤浩市の発言が、ネット上を中心にちょっとした騒動になっていた。「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」。漫画「ビッグコミック」のインタビューで、そのように役作りについて語ったことが、「安倍首相を揶揄(やゆ)している」と一部で批判、怒りの声が上がったというのだ。安倍首相が第一次政権時に潰瘍性大腸炎を患っていたことは知られており、それをからかったとみられた模様。著名人がツイッターで佐藤の発言にかみつき、その投稿に対してもさまざまな意見が出されていた。

 この騒動で一番関心があった部分は、だれが反応したか、その反応の内容などではなかった。佐藤の発言の真意だ。病気の人をからかったのなら悪いことだが、そうでないなら騒ぎ立てる必要もない。肝心の真意が定かでない状況で、ネット上の炎上が大きくなっていくのを眺めていると、「一体、これは何なの?」と冷めた気持ちにさせられ、「騒ぐ前に発言の真意を知りたい」との思いもどんどん強くなってきた。

 情報発信ならSNSを使えば、誰にでもできる時代。マスコミの役割としては取材を通じ、「事実」を正確に報道することが求められると思う。「揶揄した」事実がなるのかないのか、騒ぎを伝えるより先に調べるべきところだと感じる。

 芸能人がSNSの発言を切り取られ、別の意味で報道されるとよく憤る。発言後にきちんと取材すれば、そんな不信感は生まれないはずだが…。今回の炎上で仕事のあり方も考えさせられた。(賀)