趣味で古銭等を収集している御坊市湯川町財部、松本新一郎さん(70)が8年前、北塩屋の御坊工業団地の山で発見した化石が、県立自然博物館の調べで、1億~5000万年前のカニである可能性が高いことが分かった。御坊は地学的に化石が出にくい地域で、初めての発見とみられるという。カニの種類等は引き続き調べており、北塩屋周辺の過去の地層を知る上で貴重な資料となりそう。
松本さんは子どものころから古い紙幣や硬貨を集めるのが好きで、化石にも興味があり独学で勉強したり、田辺市でアサリの一種の化石を見つけたこともある。
カニの化石は2011年3月、身内の建設会社でアルバイトをしていたときに見つけた。御坊工業団地近くで山を削る作業をしていたとき、大きな岩の中に化石が残りやすいノジュール(石の塊)があるのを発見。「あの塊を割ってみたい」と思っていたら、たまたま重機のツメでかいた拍子にノジュールが落下した。「ラッキー」とばかり、休憩時間に拾ってハンマーで割ると、中から化石を見つけて大興奮。「カブトガニの化石や」と分析し、持って帰って大切に保管していたという。
つい最近、化石に詳しい知人と会う機会があり、カブトガニの化石の話をすると、「それは大発見やで」といわれ、県立自然博物館に持ち込んで調べてもらうことにした。
化石に詳しい同館の小原正顕主任学芸員に見てもらったところ、カブトガニではないが、一目見てカニの化石と判断。甲羅と足の部分が残っており、ツメがない状態。保存状態もよく、甲殻類の化石の専門家にも見てもらってさらに詳しく調べることにしており、時代やカニの種類も特定できる可能性が高いという。
小原主任によると、御坊は白亜紀の1億年前から古第三紀(白亜紀の次の時代)の5000万年前、深い海が隆起して形成された土地。化石がよく見つかる湯浅や有田川町などはいったん形成された土地が何かの拍子に地盤が沈み、浅い海が広がった所が隆起した土地。生き物がたくさん生息していたのが化石になって見つかるが、御坊のようにもともと生き物があまり生息していない深い海の地層はそもそも化石が少なく、今回のように見つかるのは非常に珍しい。
カブトガニの化石ならおそらく日本で初めての大発見だったが、カニでも十分珍しい。小原主任は「御坊で化石が見つかること自体がまず珍しい。その場所の地質を知る上で貴重な資料となる」。松本さんは「カブトガニではなかったですが、カニと分かって感無量です。どんな種類のカニなのか、調査結果が楽しみです」と胸を躍らせている。
写真=カニの化石を手に松本さん

