人間は他の人に情報を伝えることができる。その手段としては文字であったり映像であったりするが、日常の大部分は会話になるだろう。そこには話し手と聞き手のコミュニケーションがある。話し上手や聞き上手と言われる人もいるが、どちらか一方が素っ気ない態度をとれば相手に嫌な思いを与えてしまう。そうなれば円滑なコミュニケーションは図れない▼2004年から昨年末まで15年間にわたって人権擁護委員を務めたみなべ町山内の原田武俊さん(77)。昨年10月には法務大臣表彰も受けた。人権相談では住民からの悩みの解決に力を注ぐなど積極的に取り組んだ。去る18日に町役場で感謝状の伝達式があり、他の人権擁護委員や小谷芳正町長らと歓談した。原田さんはこれまでの活動を振り返り、「相談を親身になって聞くことに一番力を入れた。相談者が悩みを打ち明けるだけですっきりとした気分になって帰っていくということも多々あった。問題解決には聞くことが大切だ」と話していた▼昔と比べ、今の時代は向き合って会話するというコミュニケーションが不足しているのではないか。家庭では夫婦共働きの核家族が増加し、場合によっては家族そろって食事ができないケースもあるだろう。加えて、スマートフォンの普及で、家族が一緒にいてもそれぞれが自分の携帯画面を見ていることもあるのではないか。友達同士が集まっても会話せずに携帯をいじっている光景もよく目にする▼凶悪犯罪がよく報道されるが、犯罪者が育ってきた環境に問題のある場合も多い。自分の悩みを誰かに打ち明けるという機会が少なく、誰にも分かってもらえない。その対処にはやはり悩みを持つ人の話を誰かが聞いてあげること。いま、その力が求められている。(雄)