先日、田辺市で「シミケン」の愛称で親しまれている元アナウンサー清水健さんの講演会が開かれた。スタイリストだった奈緒さんと結婚したが、妊娠中に乳がんが発覚。出産後に病状が悪化して29歳の若さでこの世を去った。子どもを産んでから112日後で、結婚生活はわずか1年9カ月。おなかの子をあきらめてがんの治療に専念するという選択肢もあったが、夫婦で出した答えは「3人で生きる」ということだった。

 講演のテーマは「大切な人の『想い』とともに…」。奈緒さんへの思いを赤裸々に語り、「あの日があったからいまがある。これからもあの日に正面から向き合って生きていきたい」と述べ、妻を亡くした悲しい経験から「苦しんでいる人を1人でも減らし、笑顔の人を1人でも増やしたい。少しでもその手助けができれば」と訴えた。

 「大切な人」とはどんな人か。いろんな考えがあるかもしれないが、単に仲がいいというだけではないだろう。好きとか嫌いとかという感情だけでなく、強い絆で結ばれているような関係もそうだろう。けんかすることが多い間柄でも大切な人は存在する。

 どんな人でも寿命に限りがある。失ってから大切な人だったと気付くというのでは寂しい。時間を過去に巻き戻すことはできない。大切な人に対してできることは手を抜かず、感謝の気持ちを伝えよう。講演では「大切な人をギュッと抱きしめて下さい」と呼びかけていた。同感である。

 ただ、長年寄り添った夫婦の場合、「どうしたん? ちょっと体の具合が悪いちゃう?」とさめた言葉で返されてしまうかも分からないが、決してめげないことも大切かも…。(雄)