日高町小浦区出身でアメリカに渡り、後に農業で成功して故郷に莫大な私財を投じて環境整備を行った、故坂田久三郎氏の孫のシンディ・アン・オクジさん(61)=カリフォルニア在住=が来日し、20日に同区を初訪問した。区内にある坂田氏の顕彰碑前では、地元住民約80人からサプライズの歓迎を受け、「半世紀にわたり祖父への感謝の思いを持ち続けてくれてありがとう」などと、感激の涙を流した。

 坂田氏は少年時代の1900年に渡米。現地農家に住み込みで働き、26歳には独立して堂々たる農業主となり、「農作物と話をする」とまで言われるほど農業経営に成功した。そんな折、62年に帰国して小浦区を訪れた時に、昔ながらの悪路で不衛生な井戸水に頼る状況に心を痛め、1500万円を寄付。4年間かけて貯水池を拡大して水道を各戸につなぎ、道路や溝も舗装整備した。「だれにも真心と正直を」を信条にした坂田氏の偉業について、国は66年に勳五等瑞宝章と紺綬褒章を贈り、地元区では同年3月、区内に顕彰碑を建立。除幕式には当時の小野真次知事も出席した。

 今回、日本での旅行の機会に、祖父の偉業についてあらためて知り、出生の地を見ておきたいと、坂田氏の次男の次女となる孫のシンディさんと夫のデイビッドさん(65)が同区を訪問。小浦公民館前にある顕彰碑前では、坂田氏への感謝の気持ちを表そうと、地元の子どもから大人まで80人がサプライズで出迎え、歓迎セレモニーを実施。シンディさんはびっくりしながらも、「祖父のことを忘れないでいてくれて感謝、感激で胸いっぱいです。本当にこの瞬間が私の旅行を特別なものにしてくれました。私が小浦区とのつながりがあることも大変うれしく思います。親戚にもこのことを報告します」と涙。「今度は皆さんがカリフォルニアに遊びに来てくれるのをお待ちしています」と呼びかけた。地元の山本源昭区長(67)は「坂田氏の偉業は私が11歳の頃でいまも覚えている。当時の1500万円がいまだと1億数千万円にものぼるが、その恩恵を長年受けていることに大変感謝。シンディさんに感激していただき、私も感激している」と話した。

 このあと、オクジ夫妻は山本詩月さん(比井小学校6年)と磯崎日向さん(同5年)から花束を受け取り、顕彰碑前に献花。区民らと記念撮影も行った。同区ではこの日のために地元の親戚から話を聞いてまとめた家系図も用意し、シンディさんのはとこに当たる石田源さん(82)、三岩禎次さん(80)、橋詰ひろみさん(67)らと確認。昔の写真なども持ち出し、当時を振り返った。

写真=顕彰碑前で記念撮影するシンディさん(後列左から3人目)と区関係者ら