18日に開幕した御坊以南のJRきのくに線等を舞台にした芸術イベント「紀の国トレイナート」で、ことし初の試みとなった駅周辺の地域を深く知る「ローカルダイブ」の第1回が19日、初参加の紀州鉄道西御坊駅出発で行われた。県内ほか東京などから35人が参加する盛況ぶりで、伊勢屋の旧酒蔵、堀河屋野村などを語り部と一緒に巡り、御坊の魅力を感じる絶好の機会となった。
紀の国トレイナートは、御坊から新宮市の間の30駅を全国の芸術家が作品で飾って「アート駅舎」に変えるイベントで、ことし5年目。「ローカルダイブ~列車を降りて、まちへ~」は、駅舎を飾ったアーティストと一緒に深く潜るように地域を楽しむ小旅行。これまでは駅や臨時列車がメーンだったが、もっと地域との交流を深めていこうと、初めて企画された。
トップを切ったのは、ことしから初めて参加した紀州鉄道の「御坊紀州鉄道ダイブ」。手編みしたミシン糸の網などを使って西御坊駅を飾り付け「紡績業で栄えた過去と、海に近い漁師まち」を表現した芸術家の岩塚一恵さん(東京文化学園大学造形学部助教)と一緒に西御坊駅周辺のまちを巡るイベントで、県内外の家族連れや浴衣姿の大学生、年配者まで幅広い年代が集まった。JR御坊駅から紀州鉄道に乗って西御坊駅に降りた参加者に、岩塚さんは作品作りのコンセプトを説明し、「いつまでもこの駅舎が残ってほしい」との思いを披露。紀州鉄道紀伊御坊駅長の大串昌広さんは「90周年の節目に、西御坊駅をきれいに飾っていただいてありがたい」と感謝。全員でアート作品を見学したあと、ローカルダイブに出発した。
語り部の大谷春雄さんが案内人を務め、最初に小竹八幡神社前の伊勢屋で、普段は開放していない旧酒蔵を見学。田淵家12代の光彦さんが、昨年11月に国指定有形文化財に指定されたことを説明。大谷さんは酒蔵2階で「田淵家第9代の栄次郎氏が紀州鉄道(前身の御坊臨港鉄道)の創設者。田淵家は当時、旧御坊町内の西側半分ほど所有していた土地を提供して鉄道工事の早期完成を実現させた」などと紀州鉄道施設秘話を話した。参加者は、丸太を積み重ねたような特徴ある継ぎ手のある内観に見入っていた。全国の芸術イベントを巡るのが好きで東京から一人で参加した山田大輔さん(37)は「伊勢屋は趣(おもむき)があり、御坊のまちは初めてですが、歴史を感じる。ツアーがあればまた来たい」と話していた。
一行はレンガ塀に残る空襲の記憶、堀河屋野村、江戸時代からの廻船問屋「和泉屋長屋敷」、江戸時代のろうそく問屋「志賀屋川瀬家」、日高別院、御坊屈指の豪商の分家「南の紀小竹屋旧跡」、中川邸などを巡って古い町並みなどを堪能し、御坊の魅力を体感していた。
写真=伊勢屋で継ぎ手を見ながら大谷さん㊧の説明を聞く参加者


