10日も前になるが、日曜夜9時、TBS系「陸王」第1話を見た。「半沢直樹」「下町ロケット」の池井戸潤原作。全国紙の番組案内で「1話から涙なしには見られない」と書かれていた◆老舗足袋店「こはぜ屋」は資金繰りが苦しく、宮沢社長(役所広司)に銀行の融資担当者坂本(風間俊介)が新規事業として、マラソンシューズ開発を提案。宮沢も積極的に取り組むが、坂本の上司はリストラで建て直しを求めており、坂本は転勤させられる。挨拶に来た上司は無責任な提案をしたと坂本を罵倒。最初は静かにきいていた宮沢はその言葉に怒る。「坂本さんは新商品ができるたび足を通し、一緒に考えてくれた。立場は違っても同志だと思っている。うちの足袋をはいたこともないあなたがその同志を馬鹿にするのはやめて頂きたい」そこで坂本のみならず、共演者もみんな涙を噴き出すようにして泣く。注目のシーンであった。筆者もやっぱり泣きながら見ていた◆ところがこの「こはぜ屋」、納期に間に合わすため皆が夜中まで働くが残業代は出ない。「ブラック企業の美化では」との声もネットにあった。しかしドラマ制作者はサービス残業を奨励しているわけではなく、単に社長が従業員に慕われている表現に思える。ブラック企業の問題には適正に対処すべきだがそれはそれ、これはこれである。モデルについても取り沙汰されているが、著者は「モデルはなくフィクション」と述べている◆物語は現実の焼き直しではなく独自の存在。その感動の核は、作り手が人間を描こうと心血を注いだところにある。ドラマの場合、それに命を吹き込むのが役者。キャストとスタッフの熱意が感じられ、いいドラマになりそうだ。大河に加え日曜の夜が楽しみになった。      (里)