NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」を毎週見ている。先日の第33話では物語が一つの山場を迎え、ネットでも話題になる衝撃的な展開だった◆柴咲コウ演じるヒロイン、井伊家の当主で尼僧の次郎法師こと直虎が、高橋一生演じる筆頭家老の小野政次を自らの手で刑死させる。史実では「小野は奸臣で井伊家を裏切っていた」とされるが、ドラマでは幼馴染の直虎に思いを寄せ、井伊家を裏切っているふりをしながら実は防波堤となって守っていたという新解釈。今回のラストで次郎法師は、はりつけの政次を見守り読経するかと思うと、兵の槍を奪い取り、文字通り引導を渡す。驚愕する一同の前で政次とののしり合うように見せかけ、最後の言葉を交わす◆女性プロデューサーのインタビュー記事を読むと、上がってきた脚本を読んで「大泣きしました」。音楽担当者の女性も熱を出して寝込み、主演の柴咲コウは「台本を読んでこんなに衝撃を受けたことはない」と。「日曜夜の大河ドラマでここまでやっていいのか」と思いながらも、スタッフの熱意、登場人物の内面を見据えた脚本執筆の経緯を考え「この形でまっとうしよう」と決めたという◆「槍で胸を突かれてあんなに話せるものなのか」など素朴な疑問もさほど気にならない、すべてを超えてつくり手と演者の気迫が伝わる場面。柴咲コウがこれまでにないほど気高く美しく見えた。ネットで感想を見ても、衝撃の強さより感動の声が大きいようだった◆最大公約数的に好感度の高いものをつくって丸くおさめるのではなく、自身の強い思い入れをかたちにして発信する。心を動かす作品をつくるのに一番必要なものは、そういう他と取り替えのきかない、オリジナリティの核のようなものなのだろう。      (里)