日高高校附属中学校1年生の平和学習を取材した。講師は田辺市龍神村、古久保健さん。昭和20年5月5日に米戦闘機B29の同村墜落に遭遇した体験を語った◆授業の中で、大阪芸大映像学科学生が制作したドキュメンタリー映画「轟音~龍神村物語~」も上映。「遺体の一部が川に落ちていた」「木の枝に衿がかかり、直立した姿勢で亡くなっていた」など率直に語られる村の人々の回想は現場の悲惨な状況を直接的に伝え、胸に迫ってきた◆村のある女性は、慰霊碑除幕を見た感想を語っていた。真っ白い布が引かれ黒い碑が現れた時、その人は「美しい」と思い、心がすっきりしたという。当時の悲しい現場を目にし、その魂を慰めなければとの思いを持っておられたからこそ至った心境だったのではないだろうか◆古久保さんは父を日華事変で亡くしておられ、「亡き肉親を思う遺族の心に日本も米国もない」と米兵の遺族を探索。対面を実現させた。映画にはその模様も収録。兵士の最期の様子を高齢の遺族に伝えるのは酷ではないかと配慮しながら、遺族本人の希望もあって古久保さんは率直に伝えた。涙とともに語られたその言葉は、映像を見る者の心にも焼きついた◆講演で特に心に残ったのは、「『戦争は二度と起こしてはいけない』と、口ではなんぼでも言える」という古久保さんの言葉。必要なのは頭だけの理解ではない。あの時代、実際に何があったのか。聞ける時にしっかりと聞き、内容を、そして語ってくれた人の表情を、声音を、心にくっきりと刻んでおかねばならない。口先だけでなく「本当に平和を求める心」を培うために◆終戦記念日を問う18~19歳対象のNHK世論調査で、「知らない」が14%という結果を見ながら、そう強く思った。   (里)