本年度第1回市民教養講座を取材した。講師は書道家の武田双雲さん。書道を通じて得た世界観を、楽しく聴かせてくれた◆本名は「武田大智(だいち)」。幼い頃は、その名を平仮名で書くと3回登場する「た」の字が好きで、特に書道家の母双葉さんが書く「た」は「六本木のモデルのように」美しく大好きだった。ところが、隣の席の子の書く「た」に衝撃を受ける。2画目の縦線がキリンの首のように長く、3・4画目はかなり外れた場所にチョンチョンとついている。「これでも『た』なのか」と、好奇心の赴くまま同級生全員と校長先生に「た」と書いてもらった。集まった「た」を見てすごいことに気づく。「同じ『た』が一つもない」◆「字にはその人の性格がどうしても表れる」ので、どんな字にも個性を見いだして面白く感じるという武田さん。初めてのアルバイトで年賀状の仕分けをやったが、手書きの文字に見とれてさっぱり進まず4時間でやめさせられる羽目に。枠にはまらない行動パターンは生まれつきで、授業中などは全然じっとしていられなかった。野球チームのピッチャーをやると、肝心のところできれいな雲に見とれて動きが止まってしまう。それでも両親は決して怒らず「天才だ」といって育ててくれたという◆講演からは「すべてのものに好奇心を持ち、ワクワクして向き合えば何もかも輝いて見える」という前向きな世界観が伝わってきた。その根本には、あるがままの自分を全肯定してくれる両親の存在があったのではないかと思う◆終演後はかなり長い時間、観客の写真撮影の希望に応じた。その笑顔からは、「みんなで楽しい時間を共有したい」という自然で前向きな思いがあふれるようだった。 (里)

