まるで「満天の星のよう」という言葉がぴったりな光景だった。それは夜空に広がっているのではなく、自宅近くの用水路と山の間を通る道路沿いで見られた。そう、初夏の風物詩、日本人はみな心を奪われるホタルの光である。乱舞とはこのことで、田舎育ちの筆者でも、ことしのホタルの多さには驚いた。街灯のない真っ暗な夜道で、リズムよく点滅を繰り返す幻想的な光に心が癒やされる。平安時代には源氏物語や枕草子でもホタルの文字が見られ、「ほうほうほたるこい、こっちの水は甘いぞ」は江戸時代からあるわらべ歌といわれている。いつの時代も日本人の心をつかんでやまない。
 初夏の風物詩であるのと同時に、環境のバロメーターにもよく使われる。「ホタルの棲む環境を取り戻そう」「ホタルが飛ぶのは環境が優れている証拠」など。乱舞する様子は、素晴らしい環境だと、ホタルたちが太鼓判を押してくれているようで、誇らしくもあった。都会暮らしの人たちにはなかなかお目にかかれない景色だと思う。田舎ならではの魅力であり、いつまでもこんな光景がみられる環境を守っていくべきだ。
 6月は環境月間。環境省の本年度のポスターには「人といきものが共生する未来へ」とあった。一昔前はコンクリート三面張りの用水路や河川整備、農薬などの影響でホタルが飛ばなくなったという地域も聞いたが、最近はよく飛んでいると聞く方が多くなった。コンクリート張りでも堆積した土砂に植物が生え、また農薬も改良され、使う方も適切に扱っているからだろう。人の自然な営みの中で、環境もまた自然と守られている。こんな素晴らしい田舎がいつまでも続いていってほしいと願う。      (片)