347回にわたって掲載してきた連載小説「河井継之助 龍が哭(な)く」が29日付で終了した。主人公の河井継之助は激動の幕末、新政府軍と戦って壊滅的な被害を受けた長岡藩を率いていた人物である
後世にまで伝えられる華々しい業績を挙げたわけではない。むしろ「故郷を焦土と化した」と、民から恨まれた人物として冒頭で紹介されていた。そんな人物の生涯をどのように描くのか、興味深く読んでいた
鮮やかな藩政改革で火の車だった藩財政を見事に建て直した手腕は、後半の読みどころの一つだった。日々めまぐるしく変わる緊迫の情勢の中、古い価値観にも浮き足立った世論にも惑わされず、自身の信ずるままに動く。長岡藩の存亡をかけて火のような勢いで頭を回転させ、気迫で交渉し、大胆に行動する
その気迫と聡明さをもってしても、越後長岡藩が灰燼に帰す苛酷な運命は回避できなかった。最後の数十回、小千谷談判以降の物語はもう悲劇に向かって突き進んでいくのが分かっているので、ほろ苦い思いをかみしめて読んでいた。傑物といっていい才覚と胆力を持ち合わせた人物でありながら、時と場の巡り合わせ故に歴史の歯車を動かす勝者の側には立てず、新しい時代の夜明けも見ずに、狙撃で受けた傷がもとで41歳の生涯を閉じる。八十里峠を越えて会津へ退く際には、「八十里腰抜け武士の越す峠」と自嘲の句を呼んでいる
どのような境遇に置かれても、その中で自身にとって最善の道を迷わず突き進んだ人間の心意気。その後ろ姿からは、香気すらたちのぼるように思われた。勝者側の物語とは異なる、歴史の厳粛な一面を垣間見た連載であった。本日付3面で、連載を終えた著者の言葉も紹介。ぜひお読み頂きたい。 (里)

