紀の川市の自宅近くに住む小学生を刃物で殺害したとして、殺人罪などに問われた男の初公判が混乱した。公判前、被告は起訴内容を争わない方針だったが、開廷直後の罪状認否で被告が否認したため、弁護人は休廷を求め、審理が5時間も中断。再開後、被告は一転、起訴事実を認めた。
 被告の自宅からは凶器の刃物が押収され、玄関や室内で被害者の血痕も見つかった。起訴事実を認めたとはいえ、ぼさぼさの髪でどてらにスリッパ、笑みを浮かべたりキョロキョロと落ち着きのない様子から、反省を感じなかった傍聴人も少なくない。
 先月28日の小金井市ストーカー事件の公判も、被告の態度が法廷をざわつかせた。被告の男は被害者の女性を刃物で20カ所以上も刺し、女性は一時危篤に陥った。この日の公判では、女性が被害者参加制度を利用して自ら法廷に立った。
 「(被告は)ファンではなくストーカー」「絶対に同じことをする。野放しにしないで」と厳しい処罰を求めると、被告は「じゃぁ殺せよ」と大声を上げ、その後も涙声で出所後の復讐を恐れる女性に「殺すわけないだろう」とわめき、退廷を命じられた。
 刑事裁判には「量刑相場」という言葉があり、一般的に裁判官は求刑の八掛けの判決を言い渡すことが多い。今回の判決もそうだった。犯行の手口、前科の有無、被害者の数などから、過去の似たような事件が参考となり、求刑を上回る量刑が言い渡されるケースはまずない。
 辻原登のストーカー犯罪の小説を思い出す。復讐に燃える犯人の異常さと被害者の恐怖をリアルに描き、主人公の女性と小金井市の事件の被害者が重なる。女性が法廷で訴えた心の叫びに対する国民の共鳴、怒りと恐怖は小さくない。 (静)